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U 建築
2.基本設計で留意した事項 ○文化センター3館の統一をはかるため、地下1階地上3階建で床面積約3300u、正方形を基調とし、シンボルタワーを持つコンペ作品の外観的形態をくずさないようにした。 ○空間の配分を、常設展示1/3、教育普及空間1/3、研究・管理・保管空間1/3を基本として考え、特別展示室・講堂・科学教室・茶室など教育普及用の部屋を確保した。 ○各空間を観覧者・職員・資料の各動線を考えて機能的に配置するようにした。公開部分である展示空間・教育普及空間は主に1・2階に、研究・保管空間は主に3階に、管理空間は主に1・地階に設けた。 ○動線上、事務室と研究室は南側に配置した。 ○観覧者動線と資料動線を分離し、資料搬入口を設けた。また特別展示室・第2ホール・講堂の一画を独立して運営できるよう別の入口を設けた。そのため入口が3か所になった。 ○正面入口は、文化センター全体の動線、内部の部屋の配置から、東側、青少年会館と正面する位置に設けた。そのため展示室は左回り動線となった。 ○階段は、メイン階段を観覧者用、サブ階段を管理用とした。また通路巾は最低 2200m/m とした。 ○展示室・特別展示室は、照明効果と、太陽光線の資料への影響を考え、無窓とした。 ○展示室は広いフロアーとし、柱を少なくするため、特別に長い梁を用いた。 ○公開部分の収容予定人員として、講堂 100名・科学教室45名・プラネタリウム 120名を考えた。 ○身障者の利用に留意し、身障者用便所・入館のためのスロープを設けた。 ○職員は20名を基本に考えた。 ○研究空間として、特に文献資料室・工作室・写真室などの設置を考えた。 ○収蔵室は、資料の材質条件によって区分して収蔵するように考え、保管条件の異なる 5室を設けた。1室は特に貴重な文化財用の収蔵室とした。法規上1室は 100u以下とした。また展示室とともに床面の耐荷重を 500kg/uとした。 ○将来、2階の特別展示室上の部分に 450uの収蔵室の増設が可能なように基礎工事を行なった。 ○資料くんじょうを1室でできるよう考えた。
3.建築工事と施設の概要 49年7月、建築、設備工事の入札が行なわれ、建築工事は鹿島建設鰍ェ施行にあたることになった。8月に開始された工事は順調に進み、予定通り50年9月に建物の完成をみた。 施行にあたっては、一般建築に見られない複雑な構造を持った建築である点・外壁の凸凹が多くまた上層部分が大きい構造である点・第1収蔵室やくんじょう室など特殊な仕上が必要な部屋の多い点など、難しい工事であったが、施行者の熱意でこれを克服することができた。またプラネタリウムのドーム工事・特別展示室のケース・茶室の建築なども特殊な工事として困難を伴なったものであった。
建築本体 ○ユリノキ保存のため、建物位置を変更した。 ○展示室の民家復原のため、1階の天井高を 6mとし、鉄骨鉄筋コンクリート造とした。 ○一階壁面のアルミキャストグリルを、経費上の問題で中止した。 ○色彩計画として、外壁は薄茶色の磁器タイル、内装は濃紺のクロス貼りを基調とした。 ○法規上、防火シャッター・排煙口・消防隊突入口などを必要な箇所に設けた。 設備関係 ○各部屋の機能にふさわしい温湿度が可能なように、図8のような数系統の空調を設けた。特別展示室ケース・第1〜3収蔵室は独立して、昼夜連続空調ができるようにした。また公害防止のため重油は用いず、ガスと電気による空調とした。 ○資料の保全のため、各収蔵室と特別展示室に炭酸ガス消火装置を設けた。 正面入口 ○風雨・光線の遮断および動線を考え、一方向開閉の二重の自動ドアとした。 ○雨の降りこみを防ぐためアーケードを設けた。 展示室 ○展示工事との関連で、電源をとりやすく、照明器具や展示物の吊り下げ、音響効果に利点がある網天井とした。ダクト類をすべて隠し、しかも天井高を最大限にとれる利点もあり、また白く塗装することで装飾的効果もえることができた。 ○展示工事のため壁面はコンクリート打ちっぱなしとした。 ○「五領ヶ台のくらし」のジオラマ部分の床を、1200m/m掘り下げた。 ○民家復原部分の大梁をなくして小梁とし、さらにダクトを梁の外に逃がした。 ○法規上、上部に排煙ダンパーを設けた。操作は予算上手動のものとなったので、操作しやすいよう、操作盤をなるべく集中させた。 ○「相模川の舟」の水槽と休憇コーナーの給茶器に備え、給排水の配管を行なった。 科学教室 ○実験室として使えるよう、床に電気とガスの配管をした。 ○多目的に利用できるよう、展示用の照明装置・黒板・マイク等を設けた。 ○焼物ができるよう、かまどのスペースを設け、強制換気装置を設けた。 茶室 ○展示物として、また実際に茶室として使用できるように、三渓園にある国指定の重要文化財「春草盧」をモデルに設計した。 ○野立てができるよう、直接外に出られるようにした。 受付案内室 ○館内放送設備および館内監視用テレビのモニターを設置した。 身障者用便所 ○車椅子で利用しやすいよう、できるかぎり広いスペースをとり、手すりなどを設けた。 ○事務室に通じる非常用ブザーを設けた。 エレベーター ○収蔵室が2階、3階にある関係から、設計上可能な限り最大の容量のものとした。 資料搬入口 ○2t車程度のトラックの荷台に合わせ、高さ850m/mのタラップをつけた。 ○ドア巾をできるだけ大きくとり(2900w×3500h)、ほかにサブドアを(800w×2100h)設けた。 ○雨水の侵入を防ぐため、ドアの内側に排水溝(200w)を設けた。 特別展示室 ○講堂・第2ホールと共通して利用し、大規模な展示ができるよう配慮した。そのため、これら各室に絵画展示用の設備と照明設備を設けた。 ○多目的に使用できるよう、ケースに流動性を持たせ、可動バックパネルや、ジオラマ等を展示できる広いコーナーを設けた。 ○ケースのガラスを監理倉庫に格納し、露出展示が行なえるようにした。 ○ケース内の不必要な熱源を除くため、螢光灯の安定器を一括して倉庫内に設けた。 講堂 ○照明・音響効果に配慮した。照明は調光装置により照度が調整できるようにした。 ○黒板のうらにスクリーンを設備した。 ○什器類を格納できる倉庫を併設した。 階段 ○観覧者の安全を考え、できるだけ広く勾配をゆるくとり、両側に手すりを設けた。 第1収蔵室 ○美術資料の収蔵を考慮し、保管条件を整えるため、ヒノキ合板で、天井・壁・床を二重にし、コンクリート面の防水処理も行なった。 ○木製の収蔵棚、網メッシュの絵画収納用ラックを設けた。 プラネタリウム室 ○ドーム工事の誤差を最小限にした。 ○音響効果を考えカーペット貼りとした。 ○非常の場合を考慮し出入口を3方向に設けた。 暗室 ○作業動線を考え、内部の設備を配置した。 ○床に防水加工を施した。 写真室 ○資料の搬入から収蔵への動線を考え配置した。 ○資料の大きさや撮影条件を検討して設計した。 ○照明のため、コンセントの電気容量を大きくするよう配慮した。 くんじょう室 ○メチルブロマイドによるくんじょうを予定し、安全に操作が行なえるよう、給排水・水封栓・ガス注入口などの位置、設計に留意した。 ○気密性を保つためエアータイトハッチ型のドアを設けた。 工作室 ○水洗い作業を行なうため、洗い場・大型湯沸器・濾過槽を設け、床に防水加工をした。 ○シャワー室を兼ねるようにした。 ○特殊器材に備え、200V三相交流を配線した。 第2・3収蔵室 ○本来、無窓をねらいとしたが、法規上、消防隊突入口(床面積の1/30)を設けた。 第4・5収蔵室 ○除湿、換気のみを行なうこととした。 ○第4収蔵室は、二層式収納棚を設置するため、天井をコンクリート打ちっぱなしとした。 屋上 ○天体観測などを考え、危険防止上、手すりを設置した。 ○防水は、特に念入りに行なった。 これらの留意事項のほか、計画したが予算上実現できなかったものとして、独立空調などをチェックする中央監視盤、汚染ガス除去のためのロールフィルター、常設展示室のケース空調などがあった。 また、建物が完成した後で問題となった点には入口付近の動線の混乱、プラネタリウムが3階にある不便、収蔵室の結露、くんじょう室のガス注入口の位置などがあった。 新たに博物館を建築する際に留意してよいと思われる点には、1階に一時的な資料置場を設ける、整理室として整理室工作室の2室を広く確保する、2・3階の壁に大型資料を搬入できる開口を設ける、無窓の展示室でも休憇コーナーはできれば有窓で独立したスペースとする、空調など設備関係の部屋の位置も慎重に設計する、冷暖房費が維持費の大きな部分を占めるので当初からそのことを頭に入れておく、などがあげられる。 「平塚市博物館」の設計について
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