U 建築

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1.建築設計の経過
 博物館の建築設計は、文化センター建設指名応募設計に入選した葛u設計事務所の手で進められた。42年から45年の間は、平塚市図書館・県立青少年会館の建設が進められたが、博物館については具体的な進展は見られなかった。
 46年5月に入り、建設準備が本格的に始まり、丘設計から提出されている入選作品を、いろいろな角度から検討を加えてみた。その結果、平塚市の博物館としての構想、博物館界全体の流れから考えてみて、十分な機能を発揮できる館にするためには、設計の一部手直しが必要との結論に達した。
 しかし、文化センター全体のバランスを考え、建物規模や外観の変更は最小限にとどめ、主に内部の部屋割を中心とした手直しとなった。このことは、館の機能の面で制約ともなった。
 建設準備室では、5月末から図面の手直しにかかり、6月25日の第4次案を教育委員会の最終案とした。これをもとに基本設計を進めてもらうよう、市建築課経由で丘設計に提出した。
 7月に入り、丘設計から基本設計の予備図面として第1試案が提示されたが、その内容は準備室案がめざした部屋の有機的つながりが、十分取り入れられたものではなかった。以降、市の建築課を交えて数回の話し合いが持たれ、館の構想に基づいた構造と機能のプランを設計者にも理解していただき、その共通認識に立って図面の検討を進めることができた。数次にわたる書き替えの後、8月25日の第7試案で一応の結論に達した。
 この段階で、46年第2回文化センター連絡会議を開催して、第7試案の了承を受け、この試案をもとに基本設計を進めてもらうことになった。その後9月30日の市議会で、建築基本設計料330万円が可決され、丘設計と契約、10月31日の基本設計図納品となった。
 基本設計では、第7試案に基づいて入選作品の部屋割を変更し、また展示室中央部の吹きぬけ・2階のバルコニーとそれに続く表階段・1階展示室の総ガラス張りの壁面をとりやめた。ガラス壁面の中止にあたっては、新たにアルミによる装飾をほどこすとの案が丘設計から提示された。基本設計時に、館の機能から考えて留意した事項は、次項に述べる通りである。
 47年9月の市議会で実施設計委託料930万円が可決され、丘設計との契約となった、11月に入り、準備室では、基本設計図の問題点、展示設計の完成により調整が必要となった点をまとめ「平塚市博物館実施設計にあたっての検討資料」として丘設計に提出した。
 この検討資料で取上げた事項には、展示室の天井高・空調設備・エレベーターの大きさなど、数10項目があり、予算上不可能だったものを除いては、ほぼ実施設計にもりこむことができた。詳しくは、実施設計・施行上の留意事項として後の項で述べる通りである。
 上記資料を中心に、丘設計、市建築課との数度にわたる打ち合わせを行ない、48年3月「博物館新築工事実施設計図」の完成をみたわけである。

 

2.基本設計で留意した事項
○文化センター3館の統一をはかるため、地下1階地上3階建で床面積約3300u、正方形を基調とし、シンボルタワーを持つコンペ作品の外観的形態をくずさないようにした。
○空間の配分を、常設展示1/3、教育普及空間1/3、研究・管理・保管空間1/3を基本として考え、特別展示室・講堂・科学教室・茶室など教育普及用の部屋を確保した。
○各空間を観覧者・職員・資料の各動線を考えて機能的に配置するようにした。公開部分である展示空間・教育普及空間は主に1・2階に、研究・保管空間は主に3階に、管理空間は主に1・地階に設けた。
○動線上、事務室と研究室は南側に配置した。
○観覧者動線と資料動線を分離し、資料搬入口を設けた。また特別展示室・第2ホール・講堂の一画を独立して運営できるよう別の入口を設けた。そのため入口が3か所になった。
○正面入口は、文化センター全体の動線、内部の部屋の配置から、東側、青少年会館と正面する位置に設けた。そのため展示室は左回り動線となった。
○階段は、メイン階段を観覧者用、サブ階段を管理用とした。また通路巾は最低 2200m/m とした。
○展示室・特別展示室は、照明効果と、太陽光線の資料への影響を考え、無窓とした。
○展示室は広いフロアーとし、柱を少なくするため、特別に長い梁を用いた。
○公開部分の収容予定人員として、講堂 100名・科学教室45名・プラネタリウム 120名を考えた。
○身障者の利用に留意し、身障者用便所・入館のためのスロープを設けた。
○職員は20名を基本に考えた。
○研究空間として、特に文献資料室・工作室・写真室などの設置を考えた。
○収蔵室は、資料の材質条件によって区分して収蔵するように考え、保管条件の異なる 5室を設けた。1室は特に貴重な文化財用の収蔵室とした。法規上1室は 100u以下とした。また展示室とともに床面の耐荷重を 500kg/uとした。
○将来、2階の特別展示室上の部分に 450uの収蔵室の増設が可能なように基礎工事を行なった。
○資料くんじょうを1室でできるよう考えた。

 

 

3.建築工事と施設の概要
 49年7月、建築、設備工事の入札が行なわれ、建築工事は鹿島建設鰍ェ施行にあたることになった。8月に開始された工事は順調に進み、予定通り50年9月に建物の完成をみた。
 施行にあたっては、一般建築に見られない複雑な構造を持った建築である点・外壁の凸凹が多くまた上層部分が大きい構造である点・第1収蔵室やくんじょう室など特殊な仕上が必要な部屋の多い点など、難しい工事であったが、施行者の熱意でこれを克服することができた。またプラネタリウムのドーム工事・特別展示室のケース・茶室の建築なども特殊な工事として困難を伴なったものであった。

 

 

 


施設概要
  a 敷地面積  6867.8750u
  b 建物概要  鉄骨鉄筋コンクリート造
   地下1階地上3階、一部ペントハウス付
   建築床面積  3926.8269u
   建 物 高  24.960m

仕上概要
  a 外部 壁:タワー部厚型特殊磁器タイル貼り、他磁器タイル四七二丁掛タイル堅貼り
  屋上:コンクリート直押えアスファルト防水豆砂利コンクリート
  プラネタリウム屋根:ラスモルタル下地塗布防水アルーコーティング塗装
  建具及ガラス:アルミサッシドア及鋼製ドア熱線吸収ガラス及網入熱線吸収ガラス
  b 内部 展示室:天井打放しEP吹付網天井床ビニアスタイル貼り
  特別展示室:天井岩綿系吸音ボード貼り、床ビニアスタイル貼り、壁モルタル金ゴテ布貼り
  講堂:天井岩綿系吸音ボード、床ビニアスタイル貼り、壁有孔べニア格子壁OSCL仕上
  第1収蔵室:天井・床・壁ともに檜フローリング合板張り
  第2〜5収蔵室:天井プラスターAEP仕上及岩綿吹付、床ビニアスタイル貼り、壁石膏プラスターAEP仕上
  プラネタリウム:天井プラスターボード布貼り、床モルタル金ゴテカーペット敷込、壁モルタル金ゴテ布貼り
  c 空調設備 パッケージ型空調器:7系統7台、全暖房容量 504,600Kcal/H、全冷房容量 546,600Kcal/H
  エアーハンドリングユニット:3系統3台
  全暖房容量 21,870Kcal/H、全冷房容量 45,200Kcal/H
  チーリングユニット:1台 冷房容量45,200Kcal/H
  冷水循環ポンプ:1台
  冷却塔:2系統2台、一般系統及恒温恒湿系統
  冷却水循環ポンプ:2系統2台、一般系統及恒温恒湿系統
  ボイラー:1台、セクショナル温水ボイラー定格出力 758,000Kcal/H
  温水循環ポンプ:1台
  膨張水槽:2台、鋼板製及 FRP製
  d 電気設備 受電:6900V3相3線式
  配電:動力 200V3相3線式、電灯 200/100V単相3線式
  変圧器:動力6/3KV3相200KVA1台、電灯6/3KV単相100KVA1台
  進相用コンデンサー:6900V3相75KVA2台
  音響設備:ロッカー型アンプ1台、卓上型アンプ2台
  火災報知設備:P型1級30回線受信機
  非常警備設備:非常警報操作器DC24V、受像器1台カメラ6台自動映像切換器1台
  e 給排水設備 給水:水道本管 200m/mより40m/m、受水槽容量25㎥、高架水槽6㎥、揚水ポンプ2台
  排水:湧水排水ポンプ1台、雑排水ポンプ2台
  ガス:都市ガス本管 300m/m より 150m/m
  f 消火設備 屋内消火栓:7ヵ所 消火ポンプ1台
  炭酸ガス消火設備:特別展示室ほか5室
  g エレベーター 荷物用エレベーター:積載量 1700kg 速度 30m/min ゲージ外法間口 2200×奥行 3278×出入口高 2500m/m
  h 工事関係者 設計:葛u設計事務所
  建築工事:鹿島建設梶@空調設備工事:東洋熱工業梶@電気設備工事:三沢電気梶@衛生設備工事:昭和設備工業梶@昇降機設備工事:東京日立エレベーター販売

4.実施設計・施行上の留意事項と問題点
建築本体
○ユリノキ保存のため、建物位置を変更した。
○展示室の民家復原のため、1階の天井高を 6mとし、鉄骨鉄筋コンクリート造とした。
○一階壁面のアルミキャストグリルを、経費上の問題で中止した。
○色彩計画として、外壁は薄茶色の磁器タイル、内装は濃紺のクロス貼りを基調とした。
○法規上、防火シャッター・排煙口・消防隊突入口などを必要な箇所に設けた。
設備関係
○各部屋の機能にふさわしい温湿度が可能なように、図8のような数系統の空調を設けた。特別展示室ケース・第1〜3収蔵室は独立して、昼夜連続空調ができるようにした。また公害防止のため重油は用いず、ガスと電気による空調とした。
○資料の保全のため、各収蔵室と特別展示室に炭酸ガス消火装置を設けた。
正面入口
○風雨・光線の遮断および動線を考え、一方向開閉の二重の自動ドアとした。
○雨の降りこみを防ぐためアーケードを設けた。
展示室
○展示工事との関連で、電源をとりやすく、照明器具や展示物の吊り下げ、音響効果に利点がある網天井とした。ダクト類をすべて隠し、しかも天井高を最大限にとれる利点もあり、また白く塗装することで装飾的効果もえることができた。
○展示工事のため壁面はコンクリート打ちっぱなしとした。
○「五領ヶ台のくらし」のジオラマ部分の床を、1200m/m掘り下げた。
○民家復原部分の大梁をなくして小梁とし、さらにダクトを梁の外に逃がした。
○法規上、上部に排煙ダンパーを設けた。操作は予算上手動のものとなったので、操作しやすいよう、操作盤をなるべく集中させた。
○「相模川の舟」の水槽と休憇コーナーの給茶器に備え、給排水の配管を行なった。
科学教室
○実験室として使えるよう、床に電気とガスの配管をした。
○多目的に利用できるよう、展示用の照明装置・黒板・マイク等を設けた。
○焼物ができるよう、かまどのスペースを設け、強制換気装置を設けた。
茶室
○展示物として、また実際に茶室として使用できるように、三渓園にある国指定の重要文化財「春草盧」をモデルに設計した。
○野立てができるよう、直接外に出られるようにした。
受付案内室
○館内放送設備および館内監視用テレビのモニターを設置した。
身障者用便所
○車椅子で利用しやすいよう、できるかぎり広いスペースをとり、手すりなどを設けた。
○事務室に通じる非常用ブザーを設けた。
エレベーター
○収蔵室が2階、3階にある関係から、設計上可能な限り最大の容量のものとした。
資料搬入口
○2t車程度のトラックの荷台に合わせ、高さ850m/mのタラップをつけた。
○ドア巾をできるだけ大きくとり(2900w×3500h)、ほかにサブドアを(800w×2100h)設けた。
○雨水の侵入を防ぐため、ドアの内側に排水溝(200w)を設けた。
特別展示室
○講堂・第2ホールと共通して利用し、大規模な展示ができるよう配慮した。そのため、これら各室に絵画展示用の設備と照明設備を設けた。
○多目的に使用できるよう、ケースに流動性を持たせ、可動バックパネルや、ジオラマ等を展示できる広いコーナーを設けた。
○ケースのガラスを監理倉庫に格納し、露出展示が行なえるようにした。
○ケース内の不必要な熱源を除くため、螢光灯の安定器を一括して倉庫内に設けた。
講堂
○照明・音響効果に配慮した。照明は調光装置により照度が調整できるようにした。
○黒板のうらにスクリーンを設備した。
○什器類を格納できる倉庫を併設した。
階段
○観覧者の安全を考え、できるだけ広く勾配をゆるくとり、両側に手すりを設けた。
第1収蔵室
○美術資料の収蔵を考慮し、保管条件を整えるため、ヒノキ合板で、天井・壁・床を二重にし、コンクリート面の防水処理も行なった。
○木製の収蔵棚、網メッシュの絵画収納用ラックを設けた。
プラネタリウム室
○ドーム工事の誤差を最小限にした。
○音響効果を考えカーペット貼りとした。
○非常の場合を考慮し出入口を3方向に設けた。
暗室
○作業動線を考え、内部の設備を配置した。
○床に防水加工を施した。
写真室
○資料の搬入から収蔵への動線を考え配置した。
○資料の大きさや撮影条件を検討して設計した。
○照明のため、コンセントの電気容量を大きくするよう配慮した。
くんじょう室
○メチルブロマイドによるくんじょうを予定し、安全に操作が行なえるよう、給排水・水封栓・ガス注入口などの位置、設計に留意した。
○気密性を保つためエアータイトハッチ型のドアを設けた。
工作室
○水洗い作業を行なうため、洗い場・大型湯沸器・濾過槽を設け、床に防水加工をした。
○シャワー室を兼ねるようにした。
○特殊器材に備え、200V三相交流を配線した。
第2・3収蔵室
○本来、無窓をねらいとしたが、法規上、消防隊突入口(床面積の1/30)を設けた。
第4・5収蔵室
○除湿、換気のみを行なうこととした。
○第4収蔵室は、二層式収納棚を設置するため、天井をコンクリート打ちっぱなしとした。
屋上
○天体観測などを考え、危険防止上、手すりを設置した。
○防水は、特に念入りに行なった。

 これらの留意事項のほか、計画したが予算上実現できなかったものとして、独立空調などをチェックする中央監視盤、汚染ガス除去のためのロールフィルター、常設展示室のケース空調などがあった。
 また、建物が完成した後で問題となった点には入口付近の動線の混乱、プラネタリウムが3階にある不便、収蔵室の結露、くんじょう室のガス注入口の位置などがあった。
 新たに博物館を建築する際に留意してよいと思われる点には、1階に一時的な資料置場を設ける、整理室として整理室工作室の2室を広く確保する、2・3階の壁に大型資料を搬入できる開口を設ける、無窓の展示室でも休憇コーナーはできれば有窓で独立したスペースとする、空調など設備関係の部屋の位置も慎重に設計する、冷暖房費が維持費の大きな部分を占めるので当初からそのことを頭に入れておく、などがあげられる。

「平塚市博物館」の設計について
            葛u設計事務所 岡崎浩二
 当博物館は、教育都市を標榜する平塚市が生活基盤造りはさる事ながら、より根源的な人間としての精神文化面の充実と向上を目途として財源事情その他のはかり知れない幾多の困難を乗り越えながら、既に10年にならんとする長時日をかけて近く完成を見ようとする「平塚市文化センター」構内の図書館及び青少年会館に次ぐ第3番目の建物である。
 締めくくりの構内造園工事を残して建物としては、本館をもって一応予定分が完工した事になる。
 建物の内部構成は公開部門と管理部門と収蔵部門と調査研究部門よりなり、同時に館内にはプラネタリウムを始め、陶芸などの集団実技指導が行える大型の科学教室や講堂、あるいは茶室など地域住民向けのコミュニティ施設部門が設けられている。また、館内環境基準も中央博物館のそれと比べていささかの遜色もないばかりか、測定値は大方の他の博物館を凌駕している。ただ、当初の企画内容に変更があったために、限られた容積にやや盛だくさんの要素を詰め込んだ感があり、各空間構成のバランスが崩れた事が惜しまれる。
 外部は中央の広場を取り囲んで、鼎立する図書館・青少年会館の外縁部に配置された数本のタワーと同じスタイルのシンボルタワーを付することによって、必然的に変容する性格の異る建物に統一をもたらし、全体の調和を計った。
 ちなみにシンボルタワーの意味するものは、広重の東海道五十三次図絵で有名な、平塚宿の高麗山の稜線をかたどって塔の先端を急角度にカットして平塚市を暗示し、カットの方向を外に向ける事によって、林立するタワー群がひとしくより高くより広さを求めて(あるいは指向して)、大地に根を下して仰然と聳立する巨大なアローラインを形成せしめ、同時に次代を担う青少年に寄せる期待を象徴する意図である。
 さて、完成を目睫に控えて長い年月、血の滲む努力を払いつつ、初志を貫いてきた市当局に心から敬意を表するとともに、この貴重な遺産が後世まで市民のこよなく愛する精神的憩いの杜として、また郷土の誇りとして、自負するに値する名実ともに「文化センター公園」らしい品格を備えた施設となることを心から切望する次第である。

 

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