絵ねことねずみ

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ろばたばなしの会の会員の方)日本の昔話で絵ねことねずみ。
 あるお寺にお経を読むのが大嫌いな小僧さんがいました。和尚さんの教えも聞かずに毎日毎日猫の絵ばかり描いているので、それはそれは立派な絵でしたけど、和尚さんは呆れてしまって、「お前のようにお経も読まない小僧は、このお寺に置いておくことはできない。どこへでも好きな所へ行け。」小僧は寺を追い出されてしまいました。
 行くあてもないので小僧は、今迄描いた絵をふろしきに包んで、よっこらしょと背負って、あちらこちらと歩き始めました。だんだん日が暮れてきて、心細くなってきたとき、明りがついている家を見つけました。やれ助かった、小僧はその家の戸を叩きました。「こんばんは」そして出てきた婆さまに「今晩、一晩ここに泊めて下さい。」頼みました。すると婆さまは「この家には泊めてやれないけど、この先すこし行くと、お寺があるからそこに泊まると良い。だが、そのお寺はどういう訳か人がいない。」そして恐ろしそうに付け加えました。「ばけもんが出るかもしんねえぞ。」それでも行くあてのない小僧は、婆さまに教えられたとおり歩いて行くと、言われたとおり寂しい荒れ寺がありました。
 小僧は暗い本堂に入ると、しょってきた猫の絵を一枚一枚ていねいに壁やら襖やらあちこちに貼って、床にも一枚一枚きれいに並べて、その中に眠りました。真夜中、小僧の枕元に、ひたひた、ひたひたと足音が聞こえます。なんだろう。小僧は暗闇の中で目を見開きましたが何にも見えません。誰かいるのか。その時、婆さまの言葉を思い出しました。ばけものだ。小僧は、??がたがたふるえながら布団の中に入っていました。足音がだんだん大きくなり、どしん、どしん、どしんと近づいてきます。小僧はただただふるえていました。すると、「にゃーお」鋭い??の声がして。どたんどたん、ばたんどたん、ものすごい音が響きます。小僧は何が起こったのか解りませんが、ただじぃーっと横になって、がたがたふるえているだけでした。何かの唸り声と、何か物がぶつかりあう様な音。どしんどしん、ばたんどしん、音はずぅーっと続いていました。そのうち、「ぎゃー」鋭い叫び声がして急に辺りが、しぃーんと静かになりました。
 次の日の朝、目が覚めた小僧は驚きました。自分が一枚一枚あちこちに丁寧に貼った猫の絵が、あるものはちぎられ、あるものは遠くへ飛ばされて、絵全部に血がこびりついていました。点々と床についている血のあとをたどって、寺の裏へまわってみると、犬ほどもある大きなねずみが血を流して死んでいました。小僧は寺の鐘を撞きました。その音を聞きつけて村人達がやってきて、大きなねずみの死んだのを見て、びっくりしました。そして「こんなばけものを退治した小僧さんはたいしたもんだ。どうかこの寺の和尚さんになって下さい。」口々に頼みました。そして小僧はお寺の和尚さんになりましたが、でもやっぱりお経は読まないで毎日猫の絵ばかり描いていたということです。おしまい。

 

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