さんしょう魚女房

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ろばたばなしの会の会員の方)今度は鳥取県のお話しです。
 むかし、鳥取の伯耆大山のお山の麓に村があって、そこに大きなお寺がありました。そのお寺の裏には池があって、さんしょう魚の親子が住んでいました。ところがある時大きな山崩れがあって、池の中に泥や土が入り込んで、水はすっかり濁ってしまいました。さんしょう魚は、水が奇麗な所でないと生きていかれません。困っていると池の近くに住んでいる若者が、池をすっかり奇麗にしてくれました。かあさんさんしょう魚は喜んで娘に言いました。「池が元どおり奇麗になって嬉しいよ。このお礼はしなければいけないだろうね。私達を助けてくれた人には、どうもお嫁さんがいないようだから、お前、行ってお嫁さんになっておやり」そこで娘のさんしょう魚は奇麗な奇麗な人間の娘になると若者のところを訪ねて行きました。とんとん、戸を叩くと若者は家を訪ねてくる人なんかいないはずなのにと不思議に思いながら戸を開けてみると、奇麗な奇麗な娘が立っています。「お前は誰だ」すると娘が言いました「私は池のさんしょう魚です。今日は池を奇麗にして下さってありがとうございました。かあさんが、そのお礼にあなたの所へ行って身の回りの世話をしてあげなさいと言うので参りました」すると若者は驚いて「お礼なんかいいよ、池へ帰りなさい」そう言いました。でも娘は「じゃ、一晩だけ泊めて下さい」ということで、一晩泊まることになりました。
 次の朝若者が目を覚ますと、朝ご飯がすっかり出来ていて、家の中も奇麗になっています。若者が仕事から夕方帰ってくると、晩ご飯がちゃーんと出来ていて、家の中も奇麗に掃除がしてありました。そして娘が、またもう一晩泊めて下さいと言います。若者が承知すると、その一晩が二晩になり、二晩が三晩になり、四晩になりして、とうとうさんしょう魚の娘は若者のお嫁さんになりました。
 二人はそうして仲良く暮らしていましたが、ある時若者が仕事から急いで戻ってきて嫁さんに言いました。「大変だ、大変だ。お前は元はさんしょう魚だったよね。実は地主さんの奥さんが重病でどんな薬を飲んでも治らないけど、さんしょう魚の生き血を飲めば治るって言うんだ。お寺のさんしょう魚を貰ってこようっていう話しをしてたけど、もしかするとあれはお前のかあさんじゃないかな」「そうです、私のかあさんです。お暇ください、里へ帰ってきます」嫁さんはそう言うと急いで駆け出して、池へ行きました。池の土手にあがると、たちまちさんしょう魚になって、どぼんと池の中へ飛び込みました。「かあさん、かあさん大変です。名主さんの奥さんが病気で、かあさんの生き血を飲まないと治らないんですって。捕まえに来ますから、早く隠れるなり、逃げるなりして下さい」するとさんしょう魚のかあさんは落ち着いて言いました。「そうかい、そうかい。私が誰かの役に立つなんて嬉しいねえ。だけど名主さんに頼んでおくれ。私を殺さないで半身だけとっといてくれたら、私はやがて元どおりになれるんだから。そう名主さんに頼んでおくれよ」そこで嫁さんは急いで家に帰ると若者にその話しをしました。若者は名主さんにその話しをすると、名主さんはすぐに承知して「解ったよ、殺さないで半身だけは残しておくから」そうして名主さんの奥さんは半分だけ生き血を貰って、病気はすっかり良くなり、かあさんさんしょう魚もやがて元どおりになったということです。おしまい。

 

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