ねずみ経

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ろばたばなしの会の会員の方)ねずみ経
 むかしある所に、お婆さんが一人っきりで住んでいた。お爺さんに死なれたばっかりで毎日仏さまを拝んでいたが、なにしろお経を知らなかったので誰かにお経を教えてもらいたいといつも思っていた。
 ある晩のこと、とんとん、とんとん戸を叩く音がする。今時分だれじゃろう。お婆さんが戸を開けてみると一人の坊さんがおった。「道に迷ってしもうた。どうか一晩だけ泊めてもらえんじゃろうか」「あーええとも泊まってけろ。だどもおらにお経を教えて下され」そう言うと婆さんは坊さまを家にあげた。ところがこの坊さまは格好ばっかりの坊さまでお経なんて一つも知らなかった。坊さまははてはてどうしようかな、これは困ったことになった。そう思っていたが、お婆さんはもう後ろの方で手を合わせてお経が始まるのを今か今かと待っている。坊さまがひょいと部屋の隅を見ると、ねずみが一匹ちょろりと、坊さまは声を張り上げて「おんちょろちょろ出て来られそうろう」お婆さんが後から続いて「おんちょろちょろ出て来られそうろう」するともう一匹のねずみが床の穴からちょろりと覗いた。坊さまは「おんちょろちょろ穴覗きそうろう」お婆さんは「おんちょろちょろ穴覗きそうろう」すると二匹のねずみは顔を見合わせてちゅうちゅう鳴き始めた。坊さまは調子に乗って「なにやらふにゃふにゃ話されそうろう」その声に驚いたのかねずみは仏壇の陰に隠れた。「おんちょろちょろ隠れてそうろう」隠れたと思ったらすぐにまた出て来た。「おんちょろちょろまた出てそうろう」するとねずみは穴の中に逃げ込んだ。「そのままちょろちょろ帰られそうろう、おんちょろちょろおんちょろちょろ」ここまで言うと坊さまは鐘をちーんと鳴らしてほっと息をついた。「お経はこれまでじゃ」お婆さんはおお喜びをして、ご馳走を作って坊さまをもてなした。「ええお経を教えて下されたありがたいことじゃ、おんちょろちょろおんちょろちょろ」それからというものお婆さんは朝から晩までお経を忘れないようにと「おんちょろちょろおんちょろちょろ」と唱えていた。
 さて、ある晩お婆さんの家に二人の泥棒がそろりそろりと忍び込んだ。泥棒が中の様子を伺おうと耳を澄ますと「おんちょろちょろ出て来られそうろう」と声がした。「おや、おかしなことを言っとるぞ、何を言ってるんだろう」泥棒の一人が障子に穴をあけて覗くと「おんちょろちょろ穴覗きそうろう」「おいわしらが忍び込んだのばれたらしいぞ」「いやいやそんなことはあるまい」「しかしあの婆さん向こうを向いたままで、わしらのしとる事を言い当てた」すると「なにやらふにゃふにゃ話されそうろう」かなり泥棒は慌てて物陰に隠れた。「おんちょろちょろ隠れてそうろう」泥棒がそーっと???いると「おんちょろちょろまた出てそうろう」「これはかなわん」泥棒はもう気味が悪くなって何にもとらずに逃げ帰った。「そのままちょろちょろ帰られそうろう、おんちょろちょろおんちょろちょろ」ちーん。そんな事があったとは何にも知らないお婆さん。それからも朝から晩までおんちょろちょろおんちょろちょろ唱えていたんだと。ぽっぴんぱらりんぷ。おしまい。

 

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