はなし

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ろばたばなしの会の会員の方)はなし
 むかーしむかし、ある村にお婆さんが若い息子夫婦と一緒に暮らしていました。ところがお婆さんは、息子がいない晩に限ってどこかに出かけて行くので嫁はいつも不思議に思っていました。その晩も息子が用事で出かけるとお婆さんは嫁に「息子の帰りは遅いじゃろ。お前はもう休みなさい」と言いました。嫁は、あっお母さんはきっとまたどこかへ出かける気だなと思い、寝間からそーっと様子を伺っていました。するとお婆さんは大きな鍋に水をいっぱい入れると囲炉裏の火にかけました。そして外に出て行くと何やら包みを持って戻ってきました。嫁が何だろうと思って覗いていると、お婆さんは袋の中から死んだ赤ん坊を取り出すとぐらぐら煮え立つ鍋に放り込んで、くったくった、くたくた煮始めました。嫁は恐ろしくなって布団の中にもぐり込みました。けれども怖いもの見たさで、また起き出して覗いて見ると、お婆さんは煮えた赤ん坊を引き裂いて醤油をつけながら骨ごとぽりぽり、ぽりぽり食べています。嫁は今度こそ恐ろしさのあまり気が遠くなってそのまま倒れてしまいました。
 間もなく戻ってきた息子は嫁が青い顔をして寝ているのを見ると「どうしたんだ」と聞きました。「あんたに話そうか話すまいかと思っていたんだけど、お母さんはただの人じゃないよ」と嫁が言うと、息子はびっくりして「何だって、お母さんがただの人ではないとは、どういうことなんだ」と聞き返しました。「実は母さんは、あんたがいない晩に限って、いつもどこかへ出かけて行くんだ。それで今夜は何をするのだろうと思って、そおっと覗いていたんだよ。そしたら母さんは大きな鍋に水をいっぱい入れると囲炉裏の火にかけ外に出てった。そして死んだ赤ん坊を抱えてくると鍋の中に放り込んでくたくた煮始めたんだよ。その上煮えた赤ん坊を引き裂いて骨ごとぽりぽり食べてしまったんだ。わたしゃ恐ろしくて気が遠くなってしまったよ」息子はこれを聞くと驚いて言いました「なんだって、母さんはそんな事をするような人じゃないぞ」「でも私はこの目で見たんだよ。恐ろしくてもうこの家にはいられないよ」「まあ待て、そんな事言うもんじゃない。母さんが死んだ赤ん坊を食べるような人ではない。だけどもお前が確かに見たと言うのなら、俺もこの目で確かめてみよう。今からまた用事が出来て出かけることにして、そおっと帰って来て寝間からこっそり様子を見てみよう」そう言うと息子はお婆さんの所にいきました。お婆さんはいつもの様に囲炉裏の火にあたっていました。「母さん、俺はまた用事が出来たから出かけてくるよ。帰りは夜中になるからね」そう言って出かけていきました。そして外にでるとすぐに戻ってきて、寝間から嫁と二人でそおっと様子を見ていました。するとお婆さんは大きな鍋に水をいっぱい入れると囲炉裏の火にかけ、外に出ていきました。そして包みをもって戻って来ると、中から死んだ赤ん坊を取り出し鍋に放り込んで煮始めました。この様子を隣の寝間から息子は嫁と一緒に息を殺して見ていました。「確かにこれはただ事ではない。何とかして退治をしなければ。母さんだと思うと出来ないが、これはもう母さんではない」そう言うと息子は嫁と二人で飛び出して行きました。「母さん何をしているんだ」するとお婆さんは、すました顔で言いました「えっわたしゃ何もしていないよ」「そこで煮ているものは何だ」「わたしゃ何も煮ていないよ」「死んだ赤ん坊を鍋に放り込んでいたじゃないか」「そんな事しないよ」「煮えた赤ん坊を引き裂いて骨ごとぽりぽり食べたというじゃないか」するとお婆さんは笑いだしました。「馬鹿なことを言うんじゃないよ。あたしはそんな事しないよ。死んだ赤ん坊を骨ごと食べるなんて、私がそんな事出来るかどうかよーく見てごらん」そう言うとお婆さんは口を大きく開けました。息子と嫁はお婆さんの口の中を覗き込みました。すると歯が一本もありません。歯が無いから、は・な・し。これはみーんなはなしでしたのさ。おしまい。

 

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