浜口先生の本

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 2000年6月1日に浜口先生の本が出版されました。「放課後博物館へようこそ」という本です。開館20周年記念展の図録の浜口先生の原稿を拡張したもののように思われます。開館20周年記念展の図録の文章を見て良いと思った方は、買われると良いのではないでしょうか。以下に浜口先生のご厚意により、はじめにを掲載させて頂きます。

はじめに

 一九七六年五月一日、神奈川県平塚市に一つの博物館がオープンしました。
 その朝は土砂降りの雨模様でしたが、約三年間、博物館作りにたずさわり、ようやく開館を迎えることができた私の心の中は、気持ちよく晴れわたっていました。その日はまた、活動の始まりの日でもありました。憧れてきた学芸員という仕事を、いよいよ本格的に始めるのだと考えると、何か体中に力がみなぎってくるようでした。
 ところで皆さんは、博物館と聞くと、どんな場所を思い浮かべるでしょうか。薄暗い電灯の下にほこりをかぶった資料が並んでいる、そんなイメージでしょうか。それとも、模型や映像がふんだんに使われていて、小さなテーマパークかと思うほど、華やかな雰囲気を持った施設でしょうか。
 確かに、博物館にはその両方の姿をしたものがあります。そして、資料を後世にきちんと伝えることを中心に考えれば、一見古めかしい館も大切な役目を果たしています。子どもたちに、自然や歴史について興味を持ってもらうことに重点をおけば、楽しく見学できる館が大事なのは言うまでもありません。
 しかし、これから紹介していく平塚市博物館は、そのどちらとも少し違う特徴を持っています。どんな特徴かはおいおいお話ししていくことになりますが、いちばんの違いは、展示室だけではなく、集会室や研究室あるいは収蔵室にも、毎日のように市民が出入りしているという点です。そんな博物館に、私は「放課後博物館」という名前を付けました。放課後というのは、学校の放課後だけを意味するわけではありません。勤めを持っている人のアフターファイブでもあり、定年を迎えた方々の人生の放課後でもあります。展示室を見学するだけではなく、余暇を使って、その活動にどんどん参加していく、そんな付き合いのできる館が放課後博物館です。
 平塚市博物館では、開館前から、幅広い活動を展開してきました。全部がうまく進んできた訳ではありませんし、理想にはほど遠い部分も残っています。しかし、学芸員たちが博物館の可能性を信じ、さまざまな試みに積極的に挑戦してきたことは確かです。この本では、私がなぜ博物館の仕事を志したか、館活動をどんな考え方で進めてきたか、その考え方が実際の活動の中でどのように変わってきたかなどを紹介していきたいと思います。平塚での小さな体験が、二一世紀に向けて、実りある博物館像を作ることに少しでも役に立てばうれしいですし、この本を読まれた方が、自分たちの町にも放課後博物館が欲しいなと思って下されば、それにまさる喜びはありません。
 もちろん、平塚市博物館の仕事は、私一人が担ってきたわけではありません。これから紹介していく、さまざまな活動も、学芸員のディスカッションの中で生まれ、その協力で進められてきたものです。この本をまとめることができたのも、その力があってこそです。準備室時代を含めれば、二五年間にわたって仕事をともにしてきた同僚たちに感謝したいと思います。
 私が、博物館に対する考え方について特に大きな影響を受けたのは、博物館準備室の中心だった小島弘義さんと、博物館問題研究会の伊藤寿朗さんでした。残念なことに若くして故人となられたお二人に、感謝の気持ちをこめてこの本を捧げたいと思います。
 なお、この本では登場するすべての方々をさん付けで書かせて頂きました。敬称を付けるべき方も大勢いらっしゃるのですが、思い切って親しい呼び方に統一させて頂きました。失礼があればお許し頂きたいと思います。

 

以下に出版社の編集の方が、ネットに載せている文章を転載します。

 このたび弊社より下記の書籍を上梓いたしましたので、ご案内申し上げます。

     記

放課後博物館へようこそ

 −地域と市民を結ぶ博物館−

 平塚市博物館・浜口哲一 著 四六判/240頁

ISBN4-8052-0656-X  定価(本体1800円+税)

 展示室を見学するだけでなく、市民が余暇を使って、その活動にどんどん参加していく、そんな付き合いのできる博物館が「放課後博物館」です。本書は、平塚市博物館で動植物を担当する学芸員の著者が、どうして学芸員を目指すようになったか、博物館建設準備室に採用されてから「放課後博物館」を作っていく様子、市民が参加する調査活動、新たな活動スタイルとしての「漂着物を拾う会」「みんなで調べよう」「セミのぬけがら調べ」などを紹介し、「放課後博物館」の考え方を提示するとともに、各地の「放課後博物館」を紹介し、自分の「放課後博物館」の探し方のヒントを示しています。
 読者の方の今後の博物館活動や環境教育活動の参考になれば、幸いです。

放課後博物館へようこそ 目次
1.博物館を作る−準備室の日々−
 1 学芸員を志して
 2 学芸員になった日
 3 アクティブな準備室
 4 考え、議論し、そして悩む学芸員
 5 開館までの道
2.動き出した博物館
 1 博物館オープン
 2 地域の自然を調べる−博物館の調査活動−
 3 新たな活動スタイルを求めて
3.放課後博物館とその活動
 1 浮かび上がった新しい博物館像
 2 各地の放課後博物館
4.あなたの放課後博物館を見つけるには
 1 自分の博物館を探す
 2 博物館を訪ねたら
 3 博物館を使いこなす
 4 博物館を作る運動
 5 学芸員になるには
 6 放課後博物館が作る地域の文化

 2000年 6月 1日
(株)地人書館・編集部 内田 健 
E-mail KYY02177@nifty.ne.jp
URL http://www.chijinshokan.co.jp
TEL 03-3235-4422  FAX 03-3235-8984
〒162-0835 東京都新宿区中町15番地

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